「ゲームを作りたい」と思ったとき、多くの人はどこから始めるかわからず止まってしまう。コードが書けないから、Unity は難しそうだから、と諦めてきた人も多いはずです。でも今は違います。AIがある。特に Claude Code と Unity の組み合わせは、個人開発の可能性を根本から変えています。
私は元ゲーム開発エンジニアです。キャリアの出発点は任天堂系ハードでのゲーム開発——Z80アセンブラでゲームの処理を書いていた世代です。C言語・C++・C# は触ってきましたが、Unity は今回が初挑戦です。だからこそ「ゼロから始める感覚」のまま率直に言えます。今が Unity で個人開発を始める最良のタイミングだと。その理由を、この連載で順番に伝えていきます。
Unity とは何か——非エンジニアのための基礎
Unity(ユニティ)は、ゲームや3Dコンテンツを作るためのプラットフォームです。スマホゲーム・PCゲーム・VRコンテンツ・建築ビジュアライゼーションまで、幅広い分野で使われています。「原神」「ポケモンGO」「Among Us」など、あなたが知っているゲームの多くが Unity で作られています。
Unity の最大の特徴は、プログラミングをしなくてもある程度の開発ができる点です。ビジュアルエディタ(見た目を操作する画面)でオブジェクトを配置し、動きをつけることができます。コードが必要になる場面でも、使う言語は C#(シーシャープ)というわかりやすい言語で、AI が得意とする言語のひとつです。
Unity は無料で始められます。収益が一定額を超えるまでは個人利用・商用利用ともに無償。個人開発のスタートツールとして、コスト面での障壁はほぼありません。
アセンブラ世代が Unity を選んだ理由——3つの強み
ハードウェアレベルのゲーム開発を経験してきた視点から、初めて Unity を触って「これは強い」と感じた3つのポイントを挙げます。
情報量の圧倒的な多さ
Unity は世界中で使われているため、日本語の解説記事・YouTube チュートリアル・フォーラムの質問回答が豊富です。詰まったときに「検索すれば答えが見つかる」環境が整っています。これは学習コストを大幅に下げる要因になります。さらに、AI への学習データも膨大に存在するため、Claude Code が Unity のコードを生成する精度が高いというメリットがあります。
Asset Store——作らなくていい素材がある
Unity には「Asset Store(アセットストア)」という素材マーケットがあります。3Dモデル・サウンド・エフェクト・UIパーツなど、ゲーム制作に必要な素材を購入(または無料で入手)できます。ゼロからグラフィックを描く必要がなく、企画とコード(AIが書く)に集中できるのは個人開発者にとって大きな武器です。
マルチプラットフォーム——一度作ればどこでも動く
Unity で作ったゲームは、iOS・Android・PC・ブラウザなど複数のプラットフォームへ出力(ビルド)できます。「スマホアプリとして App Store に出したい」「まずブラウザ版で試してもらいたい」といった柔軟な展開が、追加のコードをほぼ書かずに実現できます。 個人開発でリーチを広げるために、これは大きなアドバンテージです。
なぜ「今」Unityなのか——AI との相性が変えるもの
Unity は以前からあるツールです。ではなぜ「今」を強調するのか。答えは AI、特に Claude Code との相性にあります。
C# コードを AI が書いてくれる
Unity でゲームを動かすには C# でコンポーネント(部品)を書く必要があります。これが以前は非エンジニアの最大の壁でした。今は Claude Code に「キャラクターがジャンプする処理を書いて」と日本語で伝えるだけで、動くコードが手元に届きます。コードの意味がわからなくても、まず動くものが作れる時代になっています。
エラーの解読・修正も AI に任せられる
開発中に必ずぶつかるのがエラーです。赤文字のエラーメッセージを見て諦めてしまう人は多い。でも Claude Code にエラーメッセージをそのまま貼り付ければ、原因と修正方法を日本語で教えてくれます。デバッグ(バグ取り)という最もハードルの高い作業が、AI との対話で完結するようになりました。
設計の相談相手にもなる
「ステージをどう構成すればいいか」「スコアの保存はどこに置けばいいか」といったゲーム設計の相談も、Claude Code は受けてくれます。エンジニアの知人がいなくても、24時間・無制限に設計レビューをしてくれるパートナーが手元にある感覚です。
「動くものにしか、人は興味を持たない」 — Unity × Claude Code は、アイデアをプレイアブルな状態(実際に動いて遊べる状態)にする最短ルートです。完成を目指すより、まず「遊べる状態」を作ることを目標にしてください。
まず何から始めるか——第1回のアクションプラン
記事を読んで「やってみよう」と思ったなら、今日やることは一つだけです。
Unity をインストールする
Unity Hub(ユニティハブ)という管理ツールを経由して Unity をインストールします。手順はこうです。
- Unity Hub をダウンロード:Unity の公式サイト(
unity.com)から Unity Hub をダウンロードしてインストール - 無料アカウントを作成:Unity ID を作成(メールアドレスだけで OK)
- Unity エディタをインストール:Unity Hub から最新の LTS(長期サポート)バージョンを選んでインストール
- 新規プロジェクトを作成:Unity Hub の「New Project」から「2D」テンプレートを選んでプロジェクトを作成
インストールには30分〜1時間程度かかります。その間に Claude Code(claude.ai/code)を開いて、「Unity で作りたいゲームのアイデアを3つ提案して」と入力してみてください。インストールが終わる頃には、作りたいもののイメージが固まっているはずです。
最初のプロジェクトのテーマを決める
最初のゲームは「シンプルすぎる」くらいがちょうどいいです。目安はこの3択。
- ボールを転がして穴に入れる(物理演算の体験)
- キャラクターが左右に動いて障害物を避ける(2Dアクション入門)
- タップするだけで数字が増えるクリッカーゲーム(UI + スコア管理の練習)
「こんなに簡単でいいのか」と思うくらいシンプルなテーマで始めてください。最初の目的は「Unity でものが動く感覚を掴む」ことだけです。 面白いゲームを作るのは、その次のステップです。
個人開発ゲームが世界で売れる時代——Steamバイラル戦略を学ぶ
「ゲームを作っても誰にも遊んでもらえないのでは」と思っていませんか。現実は逆です。2024年以降、1〜数人の個人開発チームが作ったゲームがSteamで数百万本を売り上げる事例が相次いでいます。日本人個人開発者が24億円を稼いだ事例も報告されています。共通点は一つ——「実況者が思わず切り抜きたくなる瞬間」をゲームの設計に最初から組み込んでいたことです。
メッチャカメレオン——日本人個人開発者のかくれんぼゲームがSteam売上1位・24億円を達成
日本人個人開発者が作ったかくれんぼゲーム「メッチャカメレオン」が、Steamの売上ランキング1位を獲得。価格790円で300万本を売り上げ、プラットフォーム手数料・税金控除前の売上はおよそ24億円に達しました。リリースからわずか数日での快挙です。鍵は「見ているだけで面白い・誰かに見せたくなる」ゲームデザイン——かくれんぼという普遍的な遊びをベースにしたシンプルな構造が、実況者にとって非常に切り抜きやすいインターフェイスになっていました。大作グラフィックではなく「遊びの発明」に注力した結果が、世界規模での拡散につながっています。
(出典:note / 不二))
Balatro——カナダの匿名ソロ開発者が3年かけて作ったゲームが5万本超えの翌日に500万本へ
「LocalThunk」という匿名の一人の開発者がフルタイムのIT職と並行して3年かけて作ったポーカー×ローグライクゲーム。2024年2月のリリースから10日で50万本を突破し、その後も失速せず、わずか1年足らずで500万本を超えました。Steam単体での売上はおよそ1,000万ドル以上と推計されています。拡散の鍵は「手札の組み合わせが生み出す爆発的な得点シーン」——スコアがケタ外れに跳ね上がる瞬間が短尺動画として切り取られやすく、YouTubeやTikTokで自然に広がっていきました。ゲームデザインそのものがクリップを量産する仕掛けになっていたのです。
Lethal Company——21歳のソロ開発者が「笑えるホラー」で940万本のバイラルヒットを生んだ
開発者「Zeekerss」が一人で作り上げたマルチプレイヤーホラーゲーム。2023年末のリリース後、TwitchとYouTubeで爆発的に拡散し、推定940万本以上を販売。拡散を加速させた仕掛けは「近接ボイスチャット」——仲間のリアクションがそのまま聞こえる設計のおかげで、予期しない怖い瞬間が「笑えるホラークリップ」として切り取られ続けました。UIも意図的にシンプルに保たれており、プレイ画面よりもプレイヤーのリアクションが主役になるよう設計されています。
Content Warning——「ゲームの中でバズる」というメタ構造が現実のバイラルを生んだ
小規模チームが作ったこのゲームのコンセプトは「仲間と一緒に幽霊を撮影してSNSでバズらせるホラーゲーム」。2024年4月にSteamで24時間限定の無料配布を実施し、600万本以上が配布されました。ゲーム内の目標がそのまま現実のSNS行動と一致しているため、プレイヤーが実際にクリップをTikTokやYouTubeに投稿することが自然な流れになります。「ゲームの中でバズろうとする行為」が「現実でのバイラル」に直結するというメタ設計がプロモーションの核心でした。
「動くものにしか、人は興味を持たない」——この言葉はバイラル戦略にも直結します。 日本人開発者のメッチャカメレオン、Balatro の爆発的スコアシーン、Lethal Company の笑えるホラーリアクション、Content Warning のメタ構造。いずれも「実際に動いてプレイされた瞬間」がそのままコンテンツになっています。Unity × Claude Code で個人開発ゲームを作るとき、最初から「この場面は実況者が切り抜きやすいか」「プレイヤーが思わずシェアしたくなる瞬間はどこか」を設計に組み込む意識を持つだけで、完成後の広がり方は大きく変わります。グラフィックではなく「遊びの発明」——それが個人開発者の勝ち筋です。
まとめ——次回予告
第1回では Unity を選ぶ理由と、AI との組み合わせが個人開発をどう変えるかを伝えました。改めてポイントを整理します。
- Unity は無料で始められるマルチプラットフォーム対応のゲームエンジン
- 情報量が多く、AI(Claude Code)との相性が特に高い
- Asset Store でグラフィック素材が調達できるため、コードと企画に集中できる
- C# エラーの解読・修正も Claude Code が担ってくれる
- まず Unity Hub をインストールして、シンプルなテーマでプロジェクトを作ることから始める
次回は「Unity エディタの画面の見方」を解説します。どのパネルが何をするのかを理解するだけで、Unity への苦手意識が大きく変わります。Claude Code に「このパネルは何をするものか」を聞きながら学ぶ方法も合わせて紹介します。